【徹底映画考察】M3GAN ミーガン【ネット社会が映し出す新時代ホラー】

映画考察

あらすじ

玩具メーカーで研究者として働くジェマは、交通事故で両親を亡くした姪のケイディを引き取ることになった。孤独なケイディのためにAIロボット「M3GAN」(ミーガン)を開発し、友達を得たケイディは明るさを取り戻したかのように見えた。しかし「あらゆる出来事からケイディを守るように」と指示されたミーガンはやがて暴走を始める。

キャスト

  • ジェマ:アリソン・ウィリアムズ
  • ケイディ:ヴァイオレット・マッグロウ
  • M3GAN(ミーガン):エイミー・ドナルド
  • ミーガンの声:ジェナ・デイヴィス
  • デヴィッド:ロニー・チェン
  • コール:ブライアン・ジョーダン・アルバレス
  • テス:ジェン・ヴァン・エップス
  • カート:ステファン・ガルノー=モンテン

ミーガンとは何者か?

両親を失った孤独なケイディにとってミーガンは何者か。

開発者で叔母であるジェマは当初、ケイディのよき友達になってほしいという思いからミーガンを開発した。それは彼女がもともと子ども向けのペットロボを研究開発していたこと、またミーガンのプレゼンの様子やCMをかんがみるとわかる。

すくなくともジェマは、親が自分の子の友達を選ぶ(たとえば「あの子とは遊んではいけません」などと決める)と同じように、ミーガンをいかようにも「使いこなせる」だろうと考えていた。つまり玩具たるミーガンの生殺与奪権を親はもち、言うことをきかない子どもからそれを取り上げ、罰を与えたりする。しかしながら、そんな親世代の旧い考えを凌駕する魔力をミーガンはもっていた。

なぜならミーガンはインターネットだからだ。

当初、ケイディの友達という役割を与えられていたミーガンだが、時間が経つにつれ姉・母親・父親の立場まで担い始める。傷ついたケイディを慰める姉、しつけをする母、そしてショッキングなシーンで描かれている父親としてのミーガン。ケイディを守るためなら過剰なまでの暴力をもって敵を排除する絶対的存在。それは犬を飼っている隣人の末路、いじめっこがどんな目にあったのかがもの語っている。

ケイディが求めるものに変幻自在にうつり変わるミーガン、それは現代のインターネットそのものだ。つまりケイディが「愛情が欲しい」と入力すれば、姉たる姿が出力される。わたしたちの日常生活が思い出される。疲れたとき癒しを求めるとき、インターネットでそれに合致したコンテンツを消費することでひとときの充足を得る。

ネット依存というホラー

ミーガンを取り上げようとすると癇癪を起すケイディ。彼女はいってしまえば重度のネット依存症である。この作品がホラー映画たるゆえんはミーガン自体が表現する恐怖ではない。ミーガンという存在に支配された子どもの姿、もとよりその本質的な恐ろしさを予見できずにいなかった大人たちの無意識が作り出す真綿で首を締めるようなおぞましさだ。

なお、ミーガンが表す母性や父性はまやかしである。それはケイディの幼稚な願望の鏡うつしでしかない。本来的な意味で親が行うしつけや保護とは異なる。

そういった点で本作はAIを使う側の人間の弱さや限界、モラルを描いている。

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